突っ込んだ話 後編 - 中島みゆき「おだやかな時代」

私の仕事のストレスに端を発して、

上司と突っ込んだ話をした件で、

もう一つ気になる話がありました。

 

我々の部署は5年目以下の社員が結構いて、

若手の頭数は多い方です。

ただ、課長クラス以上の方々としては

ある程度まとまった仕事を

ポンと任せられる人がなかなかいないと。

言われたことはきちんとやってくれるけど、

自分なりの問題意識で

動いてくれる人がいない。

それは、ほかの部署の人に訊いてみても

どうやら同じ感覚を持っているらしい。

 

ハッキリとは言わなかったけれど、

いわゆる指示待ち部下に

困っているということなのでしょう。

 

私は仕事においては部下がいないので

ちょっと例が出しづらいのですが、

これがそうか、と思い当たるふしはあります。

 

ちょうど今頃は

忘年会の予定が決まる時期ですが、

加えてうちの部署は

12月末で退職する人もいて

その送別会も考えないといけない。

日程に気を遣わないといけないし、

10月末くらいから気にしていたのですが、

忘年会、送別会それぞれに適任というか、

やるべきだろうという若手の二人、

どちらにも動きが見られない。

 

しばらく様子を見たけれども、

もうさすがにお店も埋まってくる頃になり

二人にそれぞれ声をかけてみました。

すると、二人ともから、

「個人的には考えていたのですが」

という言葉が返ってきたのです。

 

私も5年目の指示待ち世代?なので、

それを聞いて、気持ちがわかったし、

でもそれだと評価されないんだよなぁ

という無念さも沸き起こりました。

 

 

 

指示待ち、とネットで検索したら、

「指示待ち部下は上司がつくる」

という文句が踊っていて、少々驚きました。

もちろん、どういう上司につくかで

部下の振舞いは変わるだろうと思います。

 

でも実際は、就職して仕事を始めるまでに

20年前後の人生が先にあるのであって、

そこで形成されているはずの部分の方が

もっと根本的にあるんじゃないか。

だからこそ、そこには時代の影響があって、

世代の傾向というのも表れてくる。

 

 

 

そんな風に考えていて思い出したのが、

1977年にあった

「川崎バス闘争事件」に対する

最近の学生たちの反応です。

 

車椅子の乗客に対する乗車拒否が相次ぐ中、

全国青い芝の会の脳性まひの方々が

駅前のバスに籠城した事件がありました。

その前後にも、こうした抗議活動が複数あり、

障害者が可視化されていくこととなります。

 

で、ここからは得意のうろ覚えで

申し訳ないのですが、

cakesというネットマガジンの記事で

青い芝の会と関わりのあった2人への

インタビューがありまして。

この、川崎バス闘争事件を学生達に話すと、

なかなか受け入れられない子が

けっこう、いるのだそうです。

 

それは、彼らが「ルールを破っているから」。

 

事件から何十年も経って、

それが世の中を良くした契機だと

認められている出来事だとしても、

バスを占拠して、窓ガラスも割って、

そんなことはするべきじゃないと。

 

 

  おだやかな時代

  鳴かない獣が 好まれる時代

  標識に埋もれて

  僕は愛にさえ 辿り着けない

  目をこらしても 霧の中

  レールの先は見えないけど

  止まり方しか習わなかった

  町の溜息を 僕は聞いている

 

    中島みゆき

    「おだやかな時代」

 

 

受験とか、就活あたりで考えると

わかりやすいと思うのですが、

多分情報量が少なかった昔に比べると、

今の世の中って、

標識がめちゃくちゃ増えたと思うんです。

 

こうやれば良い、こうやればうまくいく、

これはOK、これはNG。

標識は玉石混淆、眉唾モノもあって、

より正しい、より確からしい標識を

選び取り、それに唯々諾々と従うのが

上手く生きていくコツ。

そんな時代の空気じゃないかと感じます。

 

そういう時代に生まれ育ったら。

標識がないことに関しては、

標識が現れるのを待ってしまうのは、

仕方がないことのように思うのです。

 

そして、そこから脱却したいと思ったら、

やるべきことは、

自分の中に標識を打ち立てることだと、

私なんかは思うわけです。

 

私は引っ込み思案だし、会話も下手くそなので

なかなか他人の深いところまで

聞き出すようなことはできないのですが、

もしできるなら、

その人の中にはどんな標識が立っているのか、

または建設中なのか、

作りかけがいっぱいあって迷っているのか。

そんなことを聞きたいなぁ、

聞き出せるようになりたいなぁと

思っているところです。

 

 

 

  毎日 Broken my heart

  声もたてずに

  毎日 Broken my heart

  傷ついていた

 

    中島みゆき

    「おだやかな時代」