ナオさんの命日 - 中島みゆき「二隻の舟」

今日はナオさんの命日です。

 

もう亡くなってから4年も経ちますが、

命日を意識したことが一度もなく、

これからはちゃんと

この日に思い出そうということで、

スマホiOSカレンダーに

繰り返し予約をしました。

便利な時代になりました。

 

 

 

ナオさんとは、

新宿二丁目新千鳥街の、

「碧珊瑚」というお店で知り合いました。

石垣島出身の茂ママはみゆきファンで、

中学生か高校生?の頃から、

ネットでその存在を知っていたお店。

 

成人して二丁目に出始めた頃、

知り合いの紹介するお店に入りがけ、

みゆきさんのポスターが目に入って、

「ここにあった!!」と感動し、

その日にお邪魔したのが、一度目。

数日後の周年パーティにもお伺いして、

三度目、通常営業にお邪魔したときに

先にいらっしゃったのが、ナオさんでした。

 

還暦を間近に控えたナオさんは、

カニューレという

酸素吸入器を着けていました。

聞けば数年前から肺を患い、

酸素が手放せない状態になったとかで、

仕事もその時に辞めたそうです。

 

みゆきファンの集うお店である碧珊瑚。

最近は本当に、若い人が聴いていても

驚かれないような浸透ぶりですが、

当時は「糸」のロングブーム前。

碧珊瑚においても、

20歳やそこらの若い客は他になく。

そこへ現れた20歳の私。

大の若い子好きのナオさんは、

大変喜んでくださいました。

 

それからほどなくして茂ママから、

ナオさんが会いたいらしいから

お店に来て!という連絡(営業)に

従うようにお店に行き、

ナオさんとも連絡先を交換して、

お店で飲んだり、普通に食事をしたり、

仲良くさせていただくようになりました。

 

 

 

断言するほどではありませんが、

ナオさんがタイプなわけではなかった。

でも、可愛げのある優しい人柄は、

ちょっとくらい太ももを触られても

全く不快にはさせませんでした。

彼氏さん、お持ちでしたし。

 

それにまぁ、白状すると、

ボトルはいつもナオさんが

払ってくれたし、

終電で帰ろうとすると

「これでタクシー使えばいいよ」と

1万円の入った封筒をくれたりして、

大変助かっていたのでした。

(ちゃんとタクシー代だけに使ったので

 3回分くらいにはなりました)

 

私はケチんぼだったし、

ゲイバーに入るのには毎度、

かなり勇気を振り絞っていたので、

ナオさんがあれだけ私を頻繁に

引っ張り出してくれなかったら、

「2丁目は行きません」的な人種に

なっていた…かもしれません。

 

お金だけじゃなく、私の就活の時は、

その相談にも乗ってくれました。

今の私はSEを生業としていますが、

ナオさんも、元SEでした。

 

 

 

ナオさんと最後に会ったのは、

亡くなる2か月ほど前の年の瀬でした。

もうその時には、少し歩けば立ち止まり、

息を整えたり、指で酸素濃度を測ったりと

見るからに病状が進んでしまっていました。

でも正直、そろそろ最後になるかも、

なんて考えは、微塵も思い浮かばず。

 

年明けにLINEのやり取りをした時も、

自分の恋愛相談なんかしちゃって。

今でも残っているメッセージの最後は、

ナオさんの、

「今度、ゆっくり話そうね。おやすみなさい。」

でした。

 

 

 

ゆっくり話す機会を見つける間もなく、

ナオさんの訃報が茂ママから届いたのは、

亡くなってから2日後のことでした。

ものすごく仕事が忙しい時で、

寝るためだけに家に帰る生活でしたが、

その時ばかりは少し席を外しました。

 

最後に会った時にもっと、とか、

最後のLINEももう少し話を、とか、

後悔って、やっぱりするものですね。

大げさではなく、

ナオさんに出逢わなければ

その後の多くの出逢いは無かったはず。

僕の方がもらいっぱなしで、

でも僕は若すぎて、そのありがたさに

ちゃんと気付けていなかった。

全然お返し出来ずに終わってしまったのが、

やはり一番の後悔です。

 

 

あと、ナオさんが亡くなってから、

一つ考えたこと。

今、もし自分が死ぬとしても、

ナオさん居るんだなって思うと、

ちょっと怖くないなって。

湯本香樹実さんの小説「夏の庭」の

そのまんまだけども、

そんなことを考えました。

これもナオさんに感謝だな。

 

 

 

こうやって思い出すと、

また会いたくなってしまいます。

4年ってまだまだ短いでしょうか。

次にナオさんのことを誰かに話す時にも、

涙は我慢出来ないかもしれません。

 

 

ナオさんの一番好きなみゆきさんの曲は、

『二隻の舟』でした。

 

 

時は 全てを連れてゆくものらしい

なのに どうして 

寂しさを置き忘れてゆくの

いくつになれば 人懐かしさを

うまく捨てられるようになるの

難しいこと望んじゃいない

有り得ないこと望んじゃいない

時よ 最後に残してくれるなら

寂しさの分だけ 愚かさをください

 

中島みゆき

『二隻の舟』